Shinobi

 忍びました。

 

獲物に気づかれないように追跡してそっと忍び寄り、捕獲する事を「忍び猟」といいます。

 

 

僕は鹿の忍び猟に行くことが多いのですが、その方法や、気をつけていることなどここに書き残しておきます。

 まずは

 

追跡を始めるにあたって、見つけたい人のことを知らなければいけません。

 

最初はそんなに難しいことを勉強せず、簡単なことを図鑑やインターネットで調べて、相手のイメージを自分の中に作っていきます。例えばその人の好きな食べ物や場所、季節の動き方などです。写真を見て絵を描くのもとても良いと思います。

 

 

大まかな鹿のいそうな場所、忍び猟に入る場所を探します。

 

いきなり山奥で鹿を探すのも大変なので、近くで良い場所をいつも探します。

鹿にも生活があっていろんな所へ行きます。寝る場所や食べる場所、水を飲む場所、人間にはわからないけど鹿には行ってみたい場所など色々です。そんな鹿が通らなければいけないような身近な場所を探します。道路や水路、擁壁、柵などの人工物、沢や崖、餌の多いところなど特徴のある場所は、獣の痕跡が集中して見やすいです。鹿は決まった道を使うのが好きな動物です。濃い足跡や糞がたくさんあればその大まかなエリアに鹿がいます。

 

こんな風に場所を普段から見ておきます。夜中に車で移動するのも鹿を見つけやすいですね。

 最初は気楽に行きます。

 

週末にいつも目星をつけていた場所に忍び猟に入ります。

最初から気合を入れて忍びモードに入ると疲れますので、ゆっくり歩きながら森の様子を感じていきます。

 

よほど新しい痕跡や獣が好きそうな茂みなどある場合、個体数がかなり多い地域、発情期など鹿との遭遇率が高い場所は、最初から写真のような状態で行きます。

忍び猟で大切なこと

 

相手に気づかれず先に見つけることが大切です。そのために、まずは心を落ち着かせ、森の雰囲気を感じられるゆとりを作ることが必要です。狐歩きとか鹿歩き、梟の目などいろいろネイティブの技術を教えてもらいましたが、とても役立ちます。動物の動きを取り入れ、自分自身が動物になりきり、自然界のペースに自分を合わせる事で、動物の気持ちみたいなものを感じたり、いろいろな自然の姿が見えてきます。その中には相手の痕跡や姿などあります。ちょっと説明が難しいのですが教室では、動きを交えてわかりやすく話している…つもりです。

 

ちなみに、鹿に先に発見された場合でも、鹿はある程度逃げてこちらの様子を伺っている事もあります。鹿がこちらの姿をちゃんと確認したい時や、警戒心が低い個体などの場合です。この時撃つこともありますが、先にこちらから発見したほうがいろいろ有利です。

新しい痕跡を見つける。

 

新しいはっきりした足跡があったらゆっくり追跡していきます。写真中央に鹿の蹄の跡があります。

 

いくら歩いても、痕跡がまったく見つからない地域も当然あるので焦らず行きます。何もないときは忍び足など体の使い方練習だと思って歩いています。

 

さらに足跡を追いかけて行くと...

 

ほかほかのかなり新しい糞がぽろぽろ落ちていたり、鹿に傷つけられた木、体毛などいろいろ落ちています。

 

 

 

鹿の好きそうな場所が...

 

山を歩いていると鹿の好きそうな場所が出てきます。いろいろあるのですが、斜面を登った先の平らな場所、緩い斜面で良い感じの茂みがあるところ、沢沿いの平らなところ、一概には言えませんが鹿のいそうな雰囲気を感じる場所があります。そんな雰囲気を感じたら、心を静めて鹿や梟になりきってじっとその場を感じて見ます。

 

視界の端にかすかに一瞬動いた鹿の耳や頭など見えるときがあります。

 

 

ときには昼寝もいいです。

 

気持ちの良い場所があれば思い切って昼寝するのもいいです。気持ちが乱れているときはよく寝たり、小鳥を観察したり、とにかくゆっくりします。待ち伏せの練習にもなります。

 

事故を起こさないためにも、自分を追い込みすぎず余裕を持つのが大切です。

痕跡が見つからなくても…

 

とにかくゆっくりリラックスして、のんびり歩いていると、視界の端や向こうの斜面に鹿がいることがよくあります。しかもこちらに気づいていない。こっちがのん気に歩いていると殺気も出ないんですかね。

 

ご飯に夢中になっている鹿でもいたらラッキーです。が、僕の場合は大概、写真のように鹿は低い姿勢でほぼ動かず、しかも草に埋もれているときもあるので、発見が難しいです。

 

鹿を狙う

 

焦らずゆっくり双眼鏡やスコープで観察します。これから死ぬかもしれない相手は一人なのか、仲間といたらどんな間柄なのか、誰がリーダーなのか、警戒心が強いのは誰か、健康そうか、何歳くらいなのか、生き生きとしているのか、殺していいのか、自分が責任を負えるのか、など思い浮かんだことを考えて観察します。

いざ撃つとき。

 

いざ撃つときも周囲の安全を確認します。射線、人、兆弾、バックストップ、崖など。

 

特に、ずっと追いかけてしばらく観察したときは、結局撃たないこともあります。追跡できて鹿を見つけて、その鹿のことがいろいろわかると撃てない時があります。

 

僕は忍び猟が好きです。

 

忍び猟では相手を苦しめることなく仕留めることができます。もちろん確実に射撃をすることが前提ですが。今のところ全て一発で仕留めています。

 

苦しみを与えないという意味では誘引・待伏狙撃もいいし、捕獲効率が良い場合もあります。僕の忍び猟は相手を見つけられない時がまだまだありますが、たとえ殺さなくても、忍んで追跡する過程で勉強になることが沢山あります。それだけで感謝です。

 

個人的に食べる場合も、忍んで仕留める方が僕は好きです。自分でちゃんと食べるなら、苦しませずに自分でしっかり処理した肉がいいです。ネイティブアメリカンの人にもそんなことを教えてもらいました。ただ現代社会において販売などする場合は決められた解体施設に搬送して処理しなければいけないので、忍び猟は適さない場合があります。

 

個人的にはあまりやらない罠系

 

仕事で個体数調整や管理捕獲に参加すること事があるのですが、そんな時は効率が求められるので、くくり罠や囲い罠、箱罠などよく使います。また、地域のまき狩りや犬を使った有害捕獲等にも立ち会います。罠や犬など使った場合、効率がいい場合もありますが、捕獲される獣は痛みや苦しみ、ストレスで放っておいても死んでしまう状態になります。

 

許可が出ているものだし、実際鹿の数を減らさないといけないところもあるので、罠や犬などを否定する気持ちは全く無いのですが、個人的にあまり積極的になれない気持ちもあり、いろいろ悩みます。

いろいろ考えすぎると疲れてしまうのでこの辺で終わります。

 

個人的に忍び猟をやっている方が獣と命にとちゃんと向き合える気がします。

今はもうやらなくなった罠猟ですが、沢山鹿をとっていたときはなんだか心が麻痺しているような感じで、鹿の扱いもただの作業になっていた感じでした。なりたくない自分になっていたような。あくまで僕個人の話ですので、他の方がされていることや、罠がどうこうという話ではないです。

 

最近は銃よりもカメラをもって山に行ったり自然を観察することが多くなりました。僕の先生も狩猟者でしたが、晩年はカメラをもって山に行っていたのを思い出します。

 

ここで書いている追跡技術や痕跡の新旧識別、種類、接近や擬装の仕方、歩き方や視覚の使い方、森や鳥を感じる方法、射撃など一通り教室でやろうと思っています。捕る事も大事ですが、そこまでの過程はもっと大事です。そんな事を皆さんが知るきっかけを教室で作れれば嬉しいです。

 

 

違反罠に掛かっていたアナグマ保護

 

有害駆除対象になっているけど、とりあえず腫れた右前足に薬草っぽいものをすり潰して塗ってみました。最初は唸っていましたが、たおるで拭いて箱に入れると大人しくなり、撫でても平気になったので蓋を閉めてしばらくそっとしておきました。

 

食べ頃の太りっぷりだったので、どうしようか迷っているうち夜になり、覚悟を決めいざ箱の蓋を開けてみると...居なくなっていました。箱にロックするの忘れていたようです。よかったよかった。